The 25th Biannual Congress of Japanese Society of Biomechanics

第25回日本バイオメカニクス学会大会

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学会長挨拶

日本バイオメカニクス学会JSB会長
深代 千之(東京大学)

日本バイオメカニクス学会
第25回大会の開催に寄せて

第25回学会大会が、日本体育大学・世田谷キャンパスにおいて、2018年9月4~6日、「温故知新のバイオメカニクス」をテーマに開催されます。最初に、学会大会を快く引き受けてくれた船渡和男組織委員長、柏木悠実行委員長、平野智也事務局長をはじめとするスタッフの方々に、日本バイオメカニクス学会を代表して、厚く御礼もうしあげます。

日本体育大学は、1891年(明治24年)に設立された「體育會」を起源とし、その後様々な変遷を経て、戦後1949年(昭和15年)に民主体育をスローガンとして再スタートした、我が国の体育教育の殿堂ともいうべき大学です。日体大は、バイオメカニクスに関しても本学会の前身である「キネシオロジー研究会」の事務局を長きに渡って運営していただきました。この歴史ある大学において、バイオメカニクスの故きを温ねて新しきを知るをテーマに、この大会が企画・運営されることに、大きな期待を寄せています。

本大会のテーマ「温故知新」に沿って、JSBの歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。1957年に、東大・猪飼道夫教授によって「キネシオロジー研究会」が発足しました。その内容はプライベートなサロンといった雰囲気で、活動は「ひろば」というガリ版刷りの広報誌で定期的に発刊されていました。その後、この研究会名を冠とした学会大会が1972年に初めて名古屋大学・松井秀治教授の元で開催され、そして、この隔年開催の大会が今回25回目を迎えることとなります。学会大会と並行して、広報誌「ひろば」は、東大・宮下充正教授の努力により学会誌「JJSS(Japanese Journal of Sport Sciences:1983~1996年)」に発展し、現在の「バイオメカニクス研究:JJBSE(1997~)」へと続いています。

さて、JSBの研究周辺分野を国内外で俯瞰してみると、既成の学問分野という壁が取り払われつつあることを感じます。従来、別の学部組織であった医学部と工学部が「医工連携」として新たに共同研究を行うなど、現在では多くの研究者が学問分野を超えて、よりよい研究成果を求めて活動しています。このような社会の趨勢の中で、自分の研究の立ち位置、そして学会としてのオリジナリティをどのように育むかは大変重要な課題といえます。JSB会則の第一章総則では、「本会は、人間の身体運動に関する科学的研究ならびにその連絡共同を促進し、バイオメカニクスの発展をはかることを目的とする」と定められています。これは、人間を対象としていれば、生体力学研究の接近方法は様々に許容されるということになります。その意味で、国内の周辺異分野すなわち生化学、生物学、生理学、理学、医学、工学などと共存・融合して、目的を達するということが可能になります。研究成果としては、現象論Kinematicsを基に、機序メカニズムKineticsの解明に発展させられるか、その機序がどのように育まれるかという観点が重要だと考えています。JSBは、国際的にみてもISBS:国際スポーツバイオメカニクス学会はもとより、ISB:国際バイオメカニクス学会をも凌ぐ勢いで発展してきています。これからのJSBバイオメカニクス研究は、欧米をもリードするような未来志向のアイデアそして立場が期待されています。この意味において、歴史を見直して未来の方向を見定めるという本大会のテーマは、まさに時勢に適合するものと考えられます。

JSBには現在1200名を超える会員が在籍しており、喜ばしいことに若い会員を中心に増加しています。本会員は、JSBはもちろんISBやISBSの学会大会において、多くの優秀な研究が発表されています。しかし、この成果を国外の学術誌に投稿する場合が多くみられます。科研費という日本の税金で研究した成果を国外の学術雑誌に投稿・掲載し、論文の著作権を国外雑誌に与えるというのは残念だと思っています。自分たちの学会誌「バイオメカニクス研究:JJBSE」を発展させたいという研究者が増えることを願っています。JSBは若手研究者が主軸を担う学会であり、若手への研究助成も実施し 、大会では若手奨励賞も準備しています。本大会での発表と積極的な議論を通じて、自分の研究をブラッシュアップし、そしてJJBSEを活性化してもらいたいと念じています。

最後になりますが、組織委員そして実行委員の先生方はもとより、協賛企業の方々、そして日本体育大学に対して感謝の意を表します。そして、参加者全員が学会を盛り上げるような活気ある大会になることを祈念し、会長挨拶とさせていただきます。

組織委員長挨拶

JSB2018組織委員長
船渡 和男(日本体育大学)

温故知新のバイオメカニクス

第25回日本バイオメカニクス学会を、日本体育大学東京世田谷キャンパスにて、2018年9月4日~6日の3日間、開催する運びとなりました。本学での同学会の開催は、1986年の第8回大会以来32年ぶりとなります。当時の大会テーマは「動きのコツを探る」であり、大会事務局長を務められた故石井喜八先生は大会趣意を以下のように綴っておられます。「(中略)老人、障害者の人々の動き、舞台での極限状態に身体を使った美しい動き、消防の特別救助などプロスポーツ以外の職業での動きなど(船渡概略)、我々が取り組んでいる領域は、隣接諸科学の多くと、広い応用場面を有している (中略) スポーツの世界では感覚用語が極めて多く使われている。我々は感覚用語を手掛かりにして、その動作・運動に接近し、logicalな levelに押し上げなければならない。この作業こそが「コツを探る」作業であり、この実現によってのみ、隣接諸科学と会話が可能となり、われわれの成果が広く応用されるもと考える。我々はSportsという感性の多い分野に、いつまでも止まっていてはならないと思う。」(石井喜八、序にかえて、第8回日本バイオメカニクス学会大会論集、1987)

感性をlogicalなlevelに押し上げる=今風に言えば“evidence based~”ということになろうか。表現こそ変われ本質的に先人の研究者たちがわが日本バイオメカニクス学会に求めてきた価値観はぶれることがないことを感じる。さらに日本バイオメカニクス学会の沿革をたどると、今から遡ること61年、1957年の久留米での体育学会の部門別懇談会(20人余り)で、お互いに連絡を取り合って研究していけばキネシオロジーの素晴らしい発展が期待できる(故猪飼道夫先生)との意見があり、12月にキネシオロジー研究会通信「ひろば」が発刊されて、その後毎月一回程度のプリント(ガリ版)を作って通信が始まっている。その7年後の1964年東京オリンピック大会終了翌日の10月25日から29日にかけて、オリンピックに参加した世界のスポーツ医学者と体育指導者に呼びかけてInternational Congress of Sport Sciencesが開催されている(加藤橘夫編、Proc. International Congress of SORT SCIENCES, 1964, 1966)。

東京オリンピックを契機にスポーツ科学に関する興味が高まったようであるが、1970年代に入ると世界各国で今の日本研究に刺激を与えたスポーツ科学やバイオメカニクスに関する著名なテキストブックが出版された。私の知る限りでは以下の著書があげられる。北欧の著名なスポーツ医・科学者Astrand, P-O.& Rodahl, K.による“Textbook of Work Physiology”(1970 年)、アメリカ、アイオア大学Hay, J.G.による“The Biomechanics of Sports Techniques”(1973年)、 ミラノ大学Margaria, R.による“Biomechanics and Energetics of Muscular Exercise”(1976年)、カナダウォータールー大学Winter, D.A.による“Biomechanics of Human Movement”(1979年)。 大学院へ進学してスポーツ科学を志そうと触発されたのはこれらの世界的なスポーツ科学に関する著書との出会いがあったことが大きいと感じている。我々の大学院時代はこれらの著書に心をときめかしてたと同時に、世界との格差を痛感させられたことを覚えている。

それ以降日本のスポーツバイオメカニクス研究は急速に進歩発展し、深代千之会長が記述しているように今では世界の学会を凌駕するレベルまで達した。また2017年には長年にわたって本学会にご尽力され教育と研究をリードされてきた宮下充正先生(東京大学名誉教授)と福永哲夫先生(元鹿屋体育大学長)がそれぞれ「瑞宝中授賞」の叙勲の栄に浴したことは我々学会員の誇りでもある。

さて本年で開学127周年となる日本体育大学は、多くに日本の大学が縮小傾向にある中で、松波健四郎理事長のリーダーシップのもと、昔の体育学部一つから、5学部と3大学院研究科からなる体育・スポーツの総合大学を目指して、拡大路線へと発展してきている。本学は「科学とヒューマニズムに裏打ちされた『研究』と『人間教育』」という理念を高く掲げ、開かれた大学として、また一歩前へ踏み出そうとしています。(日本体育大学HPから) 動きの仕組みを科学するバイオメカニクスは、体育・スポーツ・健康科学の主幹分野の一つとして、これからどのような道標をたてて、社会貢献を果たしていこうとするのか、やはり61年前にならって、皆で議論して進めれば素晴らしいことができると考え、本学会テーマを設定した。

最後になりますが、本学会大会開催に当たり、日本バイオメカニクス学会理事長はじめ理事の先生方、実行委員の先生方、ご協賛いただきました企業の方々、日本体育大学松波理事長、具志堅学長はじめ教職員の皆様には多くのご理解とご支援をいただいております。ここに改めて感謝申し上げます。2012年に再開発工事が竣工した日本体育大学世田谷キャンパスでお迎えいたします。

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開催会場

日本体育大学世田谷キャンパス

〒158-8508
東京都世田谷区深沢7-1-1

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第25回日本バイオメカニクス学会大会事務局

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TEL:03-5706-1184
E-mail:jsb2018@nittai.ac.jp

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